高町士郎。コードネーム・ピザ屋。愛しい娘が惚れている、ユーノ・スクライアを亡き者にせんと、恋人同士の微笑ましきラブイベント時に覆面剣士ピザフィーラに変身し、人知を越えた娘愛と形容しがたいピザ屋パワーにてたびたび海鳴市や時空管理局本局を混乱へと導いた男である。
 とはいえ。それもさすがに十年も続けば周囲の人間もこなれてくるわけで。
 そういった気配が起こりかければ、時に鋼糸でスマキにして樹海に放り込み、時に闇討ちして刑事ドラマの終着点みたいな崖から海に叩き込み、時に超長距離から象も一日目覚めないといわれている麻酔を使って狙撃してみたり、それはもう色々な策を講じる。
 それでも一時凌ぎ的な効果しか得られないあたり、高町士郎はすでに妖怪変化の類になりかけているのだろう。
 さらにいえば、なのはがミッドチルダに本格的に移住したさいが一番ひどかったのだが、それ以降はずいぶんと落ち着いたものだ。
 なのはとユーノがラブラブしている情景を想像してたまに変身しかけてはいたが、それ以外は概ねいつもどおりの高町士郎だった。

「なのはママー」

 一人の、小さな女の子が現れるまでは。










帰ってきたピザ屋 ―Shirou’s Counter Attack―










「ヴィヴィオちゃん、かわいかったねー」
「ああ、そうだな」

 高町家の縁側にて、仲の良い兄妹がずいぶんとだれた様子で会話していた。
 妹のほうは、長い髪の毛を一本のみつあみにした少……女性、高町美由紀。
 兄のほうは、今は珍しくロンドンからこちらの方に戻ってきている男、高町恭也。
 二人がのんびりと話題にしているのは、つい先日なのはたちが伴って現れた一人の少女のことであった。

「丁度、なのはが魔法の世界にかかわる少し前くらいの歳かなぁ? あのくらいが可愛い盛りなんだよねぇ」
「確かにな。ま、雫のかわいさには負けるが」

 さらっと子煩悩な発言をしてお茶を啜る恭也を、美由紀はどんよりとした眼差しで見た。

「恭ちゃんってさ、意外と子煩悩だよね」
「ん? ……まあ、な」
「そのうち第二のピザ屋になったりして」
「やめてくれ。俺は父さんの様にはなりたくない」

 美由紀の発言に、恭也はしんなりとしおれたような表情でつぶやいた。
 とはいえ、自分でも明確にそのビジョンが浮かんでしまったあたりかなり危ういのだろうが。

「あぁ〜ふぅあ〜」

 と、不意に美由紀がぐったりと縁側に体を横たえた。

「どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたもないよ……。私ももう今年で二十代後半……なのにめぼしい人はなく、いまだ一人この家でセコセコ働く毎日……」

 どんよりとした眼で縁側の植林たちを見つめる美由紀。
 未だに彼氏いない歴=年齢を更新している美由紀は、もうそろそろいい歳だ。
 桃子もそんな彼女を心配してか、知り合いから無数に(比喩にあらず)見合い写真を頂いては、美由紀へと手渡している。
 だが、意外と乙女なところのある美由紀は、良人は自分で見つける!と頑なに見合いを断っているのだ。
 とはいえ、それも三十の境界線を越えるまでの話だろう。

「ふむ……」

 恭也は死んだ目をしている美由紀をみてお茶を一啜り。
 不意に思いついた冗談で、美由紀を弄ってみることにする。

「なら、これからこの縁側に一番初めに現れた奴と付き合ってみたらどうだ?」
「………なにそれ? どういうこと?」
「こんな所までやってくるのは、家族……父さんか母さんくらいなものだ。それ以外は、それなりに親交のある人たちだろう。それでもまず連絡くらい入れるもの。
 ならば、これからアポ無しに現れた男は、お前に多少は気があると見て相違あるまい」
「な、なるほど……」
「それに、運命なんてものは意外とその辺りに転がってるものだ。運試しに、そういうことにチャレンジしてみるのも悪くないだろう?」
「運命……なるほど!」

 恭也の口車にまんまと乗せられて、しゃっきり背筋を伸ばして座り直し、美由紀は穴が開くような視線で縁側から玄関につながる道を凝視した。

(まあ、そんなに簡単に現れたら苦労しないが)

 そんな妹の様子に苦笑し、どのくらいで飽きるかなーと考えながら、さてお茶のお変わりでもと立ち上がる恭也。

「ごめんください」

 縁側に、剣道着を着た一人の青年が現れたのはまさしくそんなタイミングだった。

「なに!?」
「私の運命ー!」

 恭也はあまりにも速すぎる人の登場に驚愕の声をあげ、美由紀は現れた青年を逃すまいと神速まで使って飛びついた。

「うわぁ!?」

 いきなり抱きついてきた美由紀に困惑した青年は、慌てて引き剥がそうとするががっちりとホールドされた美由紀の腕はまるで張り付いたように離れない。

「な、なんなんだ、美由紀さん!?」
「お願い〜。こんなおばさんだけど、私をもらって〜!」
「話が見えない!? とりあえず落ち着いてくれ!」
「蘇馬君なら私も良く知ってるし安心だから〜! いいでしょ〜!」
「だからわからないというに!?」

 子泣きジジイかなにかのように食い下がる美由紀を引き剥がそうとしている青年……明王寺蘇馬は、助けを求めようと恭也のほうを見る。
 恭也は一つため息をついて、自分が引き起こしてしまった事態を集束すべく、行動を起こした。
 具体的には手に持っていた茶碗を、割れるくらいの勢いで美由紀の後頭部に叩きつけた。

「すまんな。うちの妹が」
「……………いや」

 ダクダクと流血しながら倒れ伏す美由紀を見て、それから蘇馬は恭也のほうを見た。

「それで、今日はなんのようなんだ?」
「それなんだが……士郎さんはここにいないのか?」
「ん? どういうことだ?」
「いや。約束の時間になっても、士郎さんが道場に来ないんだ」

 困ったように眉根を寄せる蘇馬。
 剣道着を着ている彼は、伊達や酔狂ではなく一古流剣術の師範代を勤める身だったりする。
 そして同じく古流剣術である御神流の高町家とは仲が良く、たまに海鳴市に点在する剣術同情へと訪ねて出稽古を一緒に行っているのだ。
 そして、今日もまたそういう日だったのだが。

「父さんなら、もうとっくに出ているぞ?」
「そうなのか?」
「ああ。今朝、小太刀を持って出て行くのを見たぞ」

 恭也の言葉に怪訝そうな顔つきになる蘇馬。
 そんなこといわれても、厳然たる事実として士郎の姿は道場になかったのだ。
 だからこそ、こちらに赴いたのである。
 それなのにここにいないなどといわれてしまうと、はっきりいって困る。

「まいったな……。母さん、すっかり怒り心頭なんだが……」
「うーむ、スマンな。ともあれ、心当たりに俺から電話―――」
「恭也」

 しよう、と続けたところで、いつの間にか背後に立っていた桃子が恭也に携帯電話を差し出していた。

「メールが入ってたわよ? お仕事かもしれないから、はやくお返事書いて上げなさい」
「あ、ああ……。ありがとう母さん……」

 恭也が携帯を受け取ると、桃子は微笑んで家の奥へと戻っていく。
 ………いつの間に立っていたのだろう。唖然としている蘇馬を見る辺り、彼も気がつかなかったらしい。ありえない話だが。

「………さて、少しすまないが」
「あ、ああ」

 蘇馬に一言断って、携帯の受信メールを確認する。
 その間に、蘇馬は倒れた美由紀をお姫様抱っこで縁側の上に運ぶ。

「な、なんだと……?」

 メールの内容に驚愕する恭也。バカな、ありえないという思考が一瞬脳裏に掠めるが、厳然たる事実として、メールはそこにある。
 開いたメールには、ただ一言こう書かれていた。

『ピザ屋、襲来』





 ミッドチルダ中央区画にある、機動六課隊舎。
 平時の際は、ある意味牧歌的な雰囲気をかもし出すその場所は、さながら戦場のような空気が流れていた。
 新たなレリックが発見されたのかといえばそうではなく、はたまた新しい次元干渉犯罪が確認されたのかといえば、そうでもない。
 機動六課を騒然とした雰囲気に陥れているのは、隊長陣を中心としたエースたちへと送られた一通のメールだった。

「状況はどうや!?」
「げ、現在、クラナガンハイウェイを一台の乗用車が、こちらへと向かって急行中! その後ろに、未確認ですが……その……一人の、人間?が………」
「さよか……」

 自信なさげな部下の報告にうつむくはやて。
 報告した部下……ルキノは自分の報告のあまりのばかばかしさに自己嫌悪しているが、はやてにとってそれは虚偽の報告ではない。現実だ。

「グリフィス君。なのはちゃんたちは?」
「現在、待機室にて戦闘準備中です。それで……あの、限定解除申請がきているのですが……」
「許可します。全力で戦うように」
「ちょ、部隊長!? なに考えてるんですか!」

 あっさり隊長陣のリミッター解除を許可するはやてに、グリフィスが噛み付いた。
 当たり前だ。隊長陣のリミッターは、部隊の保有戦力制限をクリアする為のもの。
 そうやすやすと解除許可を出していては、リミッターを掛けた意味がなくなってしまう。

「相手は一人ですよ!? なのに、隊長達のリミッターを」
「必要なら、本局のハラオウン総務統括官に連絡しぃ! 三提督にもや! 全責任は私が持つ!」

 局員としての公平さから反論を試みるグリフィスを、はやては激戦を潜り抜けたものが持つ威圧感で一喝した。

「これは演習やない! 実戦や! 能書き垂れとる暇があったら、身体を動かせ!」
「は、はい!?」

 はやてのあまりの威圧感に気圧されたグリフィスは、慌てて司令室を飛び出していった。
 おそらく向かう先は通信室。律儀にはやての指示を実行するつもりだろう。

「あ、車がハイウェイを抜けて―――ええぇ!?」
「なんや!」
「に、人間が車の取り付いて……ボンネットを斬り裂きましたぁ!?」

 自分が見た事実が信じられないのだろう。ルキノが悲鳴を上げる。
 周りにいたほかの者達は、その報告に失笑した。
 それはそうだ。走っている車に取り付き、さらにそれを破壊するとなると相当な魔力反応が検知されるはずなのだ。それがなかったということは、魔法抜きで成し遂げなければならない。そんな人間が、この世にいるはずがないというのが、その場にいた九割の人間の意見だった。

「ようもったほうやな」

 だが、冷酷とさえいえるはやての声にすぐに笑いを引っ込める。
 彼女の声は、当たり前の現実を確認する為のものだったからだ。
 つまり、そういうことなのだろう。

「…………車を降りたユーノ・スクライア司書長、アリサ・バニングス、月村すずかの三名は、車を破壊した人物と思しき不審者と交戦しながら、こちらへと向かっています」

 シャーリーの淡々とした報告に、はやては瞳を閉じる。
 あれから、こちらも成長している。アリサとすずか、そしてユーノの三人がいれば管理局の一小隊とも互角に渡り合えると考えている。
 だが、それでは足りない。絶対的に力不足だろう。

「………こちらに着くまで、もってくれるとええんやけど」

 はやての悲痛な願いは、誰の耳に届くことなく消えていく。





「じゃあ、今回は皆は待機だからね」
「ちょっと待ってくださいなのはさん!」

 着々と準備を進める自分の上司に、スバルは慌てて食い下がる。
 けたたましく鳴り響くエマージェンシーコールを指差し、スバルはなのはの顔を見た。

「緊急事態なんでしょう!? どうして私達が待機なんですか!?」
「隊長。我々は、こういった有事のために毎日の訓練を重ねているのではないのですか?」

 スバルとは対照的な、落ち着いた態度でティアナも進言する。だが、その瞳にはありありと不満の色が浮かんでいるが。

「それは……」

 なのははわずかに言いよどむ。
 真っ直ぐと見つめてくる部下達に、真実を伝えることを恐れている。
 ………言えない。実の父が娘可愛さに暴走しているなんて。

(………でも、なんでなんだろう?)

 部下達への言い訳を考えながらも、なのはは頭の片隅で思考する。
 ここ最近、恋人同士の特殊なイベントなんかなかったはずだ。
 一度海鳴市へと戻ったときも、ユーノとの関係は適当にごまかしていたし、向こうもうかつに尋ねたりしないように配慮してくれた。
 特に士郎が暴走するような心当たりはないのだが。

「……これからこちらに向かってくるのは、私たちの旧知の相手なの」

 仕方なく、士郎の存在ではなく正体をぼかした形で伝えることにする。
 これで説得できるかは、はなはだ謎だが。

「そもそもこの機動六課は、あなたたちが言うように有事の際のための戦力。その戦力を……こんな私事で動かすことはできないよ」

 あくまで身内同士のケンカである、と言い切るなのは。規模はジョウロとの水と台風の雨を比較するくらいに違うが。

「だから………」
「ならばここまで大仰にする必要もないはずです」

 ティアナの鋭い指摘に、なのはは内心舌打ちをする。
 はやての判断は間違っていないとは思いたいが、それでも言い訳に苦労する材料になってしまった。

「隊長。我々は、確かに未熟かもしれません。しかし、このような自体になって安穏と隊長の影に隠れられるほど、幼くもないのです」
「………」
「なのはさん!」

 ティアナの弁護と、スバルの熱意。

「………わかった」

 それらに反論するだけの言葉を考える余裕は、今のなのはにはなかった。

「じゃあ、命が危なくなったらすぐに逃げる。これだけは徹底してね?」

 止む終えず、これをいうだけで準備に戻るなのは。
 その背中に、勢い良く頭を下げた二人のフォワードは、すばやく反転して不審人物を迎え撃つ準備に取り掛かる。
 その姿は、途中から四人に増えていた。





「―――で、ティア? 具体的にはどうするの?」

 機動六課自慢の訓練場。擬似的に建造物などを構築するそこは、今は廃ビル群を再現している。

「とりあえず、不審者を伴ってこちらにスクライア司書長を中心とした三人が向かってるらしいわ。私たちの仕事はそれから」
「じゃあ、サーチャーを起動しておきますね」

 キャロがケリュケイオンに命じて、サーチャーを起動する。
 これでいつ来てもわかるはずだ。

「それから?」
「それからは、スクライア司書長たちを交えての共同戦線。可能なら、その不審者を取り押さえ」
「あ!?」
「キャロ、どうしたの?」

 いきなり大声を上げるキャロに、エリオが不思議そうな声を上げる。
 キャロは慌てて顔を上げると、即座に報告した。

「もう、そこまで来てます!」
「はぁ!?」

 その言葉に、今度はティアナが大声を上げた。
 ばかな。いくらなんでも速すぎる。
 ユーノたちが現れるであろう方向に目を向けると、こちらに向かって炎の翼を広げた女性と、黒い翼を広げた女性が、ぐったりとした男性を抱えながらこちらに向かっているのが見えた。
 そして、その真下辺りから凄まじい勢いで水柱が立ち上り続けている。

「………人が水の上を走ってる?」

 一番目のいいスバルが、視界に納めたらしいそれを見て呆然とつぶやいた。

「………ちょっとバカスバル」
「いや、だって!? 本当に走ってるんだもん、水の上!」

 半目でつぶやいたティアナに、スバルが慌てて抗弁する。
 ありえるかそんなこと、とティアナは言い切って、飛行してこちらに向かってくる二人に念話を繋ぐ。

「(聞こえますか。機動六課スターズ分隊、センターガードのティアナ・ランスターです)」
「(! アリサちゃん!)」
「(聞こえてるわ! なのはたちは!?)」
「(現在準備中です。それまでのつなぎは、我々が―――)」
「(なにやってんの、あいつら!? とっとと出てくるようにいいなさい!)」

 ティアナが言い切るより先に、アリサが悪態をつく。
 そのあまりの音量に顔をしかめるティアナ。

「(アリサさん。とりあえず、目の前の訓練場に―――)」
「(なのはたちに急げっていってんのよ! それまでの場つなぎは、私達がやるから!)」

 ぐんぐん迫るアリサたちを見て、ティアナは不愉快な感情を覚える。
 人の話を聞いていないのだろうか? その仕事は我々のものだというのに。

「(ですから、その仕事は我々が引き継ぎます。アリサさんたちは、機動六課隊舎に避難―――)」
「(自惚れんな! あんた達程度が敵う相手じゃないのよ!)」

 アリサの一言に、ビキッとティアナの米神に青筋が生まれる。

「(………どういう意味でしょう)」
「(言葉通りの意味よ!)」
「(アリサちゃん、落ち着いて!)」
「(落ち着いていらんないから急いでるんでしょうが!?)」

 あまりにも一方的な物言いにすずかが諌めようとするが、アリサは前言撤回をする気はないようだ。
 ティアナは心が沸騰するのを感じる。自惚れるな? 自惚れているのはそっちではないのか? 確かになのはたちのような強大な才能を持っているようだが、正式な訓練もやっていない、ただの民間人にそのような大きな口を叩かれるいわれはない―――!

「(!? アリサちゃん、もう機動六課!)」
「(くっ!?)」

 アリサの慌てたような念話が届くのと同時に、不審者を迎え撃とうとしていたティアナたちの真上を高速で何かが通り過ぎる。

「(あんた達! 逃げなさ)」

 アリサとの念話を強制的に断ち切り、ティアナはスバルたちに振り返る。

「さあ、仕事開始よ! 私達の力、なのはさんたちに見せ付けてやるつもりでね!」
「「「おおっ!!」」」

 先ほどまでの念話の内容まではわからずとも、ティアナの勢いに乗って声を張り上げるスバルたち。
 その瞬間。足場にしていた一棟のビルが、縦に斬り裂かれた。





「パワーアップしとるなぁ」

 目の前で一人の人間が、ビルをまっすぐに斬り裂いた光景を見て呆然とするロングアーチに対して、はやては冷静につぶやく。

「し、士郎さん、前よりデンジャラスになってますー!?」
「久しぶりとはいえ、ホンマに規格外やで」

 やれやれと首を振り、はやては準備中の隊長陣に通信をつなぐ。

「そっちはどないや?」
『ごめん、もう二、三分かかる!』
「できればはよう。新人達にいらんトラウマ植え付ける前にな」
『わかってる!』

 ブチンと切れた通信。はやてはモニターへと目を向ける。

「時間との勝負やな………」

 モニターでは、今まさにアリサが単身士郎……ピザ屋に立ち向かわんとしていた。





「………………………なに、いまの?」

 縦に斬り裂かれ、崩れ落ちた廃ビルの真上で、現実を直視しきれないティアナが感情のこもらない一言をつぶやく。
 彼女の目の前で、ピザ屋の一振りが、またビルを斬り裂いた。

「………………………なに、あれ?」

 エリオやキャロは、ビルが崩れるときに頭でも打ったのだろう。気絶している。
 スバルは……目の前のあまりの光景に言葉が出ないようだ。

「………………………嘘だ」

 どこかの壊れたヒロインのような一言を残して、ティアナは現実からログアウトした。



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