飛び交う怒号。跳ねる弾丸。
 聖王教会のデバイス品評会の会場となるはずだったコロシアムは、突如現れたテロリストたちによって戦場へと成り果てた。
 品評会の準備に追われていた聖王教会騎士団は、この緊急事態に対して迅速に対応した。
 即座に騎士甲冑で武装、デバイスを起動し、デバイスを奪いに来たテロリストたちへと立ち向かっていった。
 だが、劣勢は否めなかった。
 第一にテロリストたちは質量兵器で武装していた。物陰に遮蔽をとり、散発的に射撃を行う。ただそれだけで、射程距離が短い騎士にとっては不利な状況である。
 第二にテロリストの数だ。聖王教会騎士団は数百人の騎士たちで構成される、ベルカ自治領聖王教会地区の自衛組織だ。だがしかし、聖王教会の任務はデバイス品評会の準備だけではない。未踏次元世界の独自探索、聖王教会関係者の警護、出店の警邏なども存在する。必然的に人数は減り、この場にいる聖王教会騎士団の人数は数十人程度。対し、テロリストたちの数はそれの三倍以上に存在していた。兵法の基本は数である。これを覆せるだけの力量を持つ者は、なかなか存在しない。
 そして第三に、聖王教会側は試作型デバイスも守らねばならないという事実。刺し違えてでも敵を倒せばいい数に勝るテロリストに対し、騎士団はデバイスを守りきらねばらないのだ。全員倒れてしまえば、テロリストたちは騎士団員の死体の横からデバイスを回収すればよい。
 ゆえに、騎士団は防衛に徹さなければならない。打って出て、下手に誰かが倒れたりすれば、それだけで騎士団は不利になってしまうのだ。

「とはいえ、この状況はきつくねー!?」
「御託ぬかさずしっかり守る! あんたがあたしらの盾なんだからね!」

 一人の青年が巨大な盾を構えて銃弾を跳ね返すその背中で、長弓に矢をつがえた少女が叫び声をあげる。さらにその後ろには背後に気を配る年若い騎士が数名屈みこんでいた。
 場所はコロシアムの通路。青年は堂々と通路のど真ん中に陣取って盾を構えているが、そのせいで格好の的である。通路の曲がり角から六人前後のテロリストたちが代わる代わる射撃を繰り返すせいで、弾幕が途切れることなく続いている。

「向こうが機関銃とかじゃないのは幸いだけど、この状況はやばいってー!」
「だまって、あたしの遮蔽になってな……さいっ!」

 ひたすら泣き言をいう青年の背中で、限界まで引き絞った弓を解き放つ少女。
 解き放たれた矢はまっすぐにテロリストの方に向かっていくが、その途中でテロリストの弾幕に引っかかって半ばからへし折れてしまった。

「チッ。やっぱり弓じゃ相手まで届かない、か。……ウルド、あんた気合で前進しなさい」
「そんな無茶なー!?」

 少女はウルドと呼んだ青年の背中を叩いて無茶ぶりをする。
 ウルドが構えている盾は、タワーシールドと呼ばれる巨大なものだ。防御力は破格だが、構えているだけで消耗するようなものを持って、嵐のような銃弾の中を前進するなど、暴風の中傘を構えて進めと言っているようなものだ。
 泣きわめいて抗議するウルドの視界で、テロリストの一人が腰から一握りの塊を取り出して、ピンを抜いたのが見えた。

「無茶でもやる! 何人かひきつけてるとはいえ、あたしらも数減らさないと……!」
「ちょ、レオナ待った! グレ、グレ来た!?」
「な!? 後退! 急いで!」

 テロリストが投げつけてきたのはグレネード。爆薬と内在された物質の破片によって一定の範囲を破壊する質量兵器だ。
 ウルドの悲鳴を受け、レオナと呼ばれた少女は慌てて後ろに座っていた騎士たちに指示を飛ばし、自身もウルドの首根っこを引っ掴んで通路を走り始める。
 カランカラン、と乾いた音を立ててグレネードが転がってくる。

「こっちくんなー!?」

 足元まで転がってきたそれを、ウルドは慌てて蹴り返す。
 盾を構えるのと同時に、グレネードは破裂した。

 ズドォォォォォォンンン!

 爆炎と無数の破片がウルドが構えた盾に襲い掛かる。
 爆炎は盾のみならず、ウルド自身の体にも襲い掛かってきた。

「ぐぉ……!?」
「ウルド!」

 騎士甲冑の上から襲い掛かる炎の熱さにうめき声をあげるウルド。
 その背後を走っていたレオナは素早く弓をテロリストたちに放つが、また撃ち落されてしまった。

「くそっ……!」
「隊長!」

 悪態をつくレオナに、先を走っていた騎士たちの涙声が聞こえてくる。
 その姿は通路になく、すでにコロシアムの観客席あたりに立っていた。
 その表情はいまにも決壊しそうなほどに怯えていた。

「走れウルド! あの子たちに情けないとこみせんな!」
「アイさー、我が女神様……」
「ふざけてる場合……!?」

 ウルドの力ない返事に、声にも顔にも出さないが焦るレオナ。

(想像以上に消耗してる……! これ以上は無理なの……!?)

 断続的に続く銃撃だけでなく、この状況そのものが消耗を加速させているのかもしれない。
 レオナはウルドの手を取って、素早くコロシアムの観客席に出る。

「あんたたち! 急いで真ん中に―――」

 観客席で待っていた騎士たちに指示を飛ばすために、顔をあげたレオナが見たものは。
 無言でこちらを狙う、無数の銃口だった。
 その数はざっと三十前後か。先ほどの十倍だ。
 レオナたちがいる場所だけではなく、観客席中にライフルを構えるテロリストたちの姿が見えた。

「―――」
「ご苦労様」

 絶句するレオナに、皮肉げな笑みを浮かべてその労をねぎらうテロリスト。
 レオナがゆっくり通路の中に顔を向けると、にやにやと笑いを浮かべるテロリストたちの視線とかち合った。

「―――そうか、初めから追い込みをかけるのがあんたたちの作戦か」
「そういうことだ」

 ここにきて、レオナは気が付いた。こちらに向かって銃撃を繰り返していたテロリストたちが、グレネードを投げて以降、一発もこちらに銃を撃ってこなかったことに。
 見てみれば、コロシアムの観客席と内部をつなぐ通路口に、何人もの騎士たちが呆けたように立ち尽くしているのが見えた。

「あー……まさかここで公開処刑とか……?」
「そこまではしないさ。優秀な騎士には我々の同志になってもらいたいのだよ」

 憔悴を隠そうともしないウルドの質問に、テロリストはそう答えた。

「同志……?」
「我々はベルカ解放の会。真のベルカ解放のために、君たちには先兵になってもらいたいのだ」
「……断る場合、どうなるの?」
「その場合は仕方ないさ。なにしろ―――」

 レオナの質問に対し、そばで怯えていた数名の騎士たちの肩を軽く叩いた。
 叩かれた騎士がひぅ、とうめき声をあげるが、テロリストはそれを無視してにやりと顔をゆがめた。

「騎士は君たちだけじゃない」
「そういうこと……」

 人質にするつもりか、あるいは捨て駒にするつもりか。
 どちらにせよ本命はデバイス。騎士はついでなのだろう。
 そもそも命とプライドを天秤にかけられて、プライドをとれる人間はまれだ。レオナやウルドのような隊長クラスの騎士は覚悟もあるが、それより下の騎士たちは命をとるだろう。
 自らの状況を冷静に判断し終えたレオナは、小さく肩をすくめた。

「――まあ、いいわ。成功したら乗ってやろうじゃない」
「隊長!?」

 あきらめたような彼女の言葉を聞いて、そばにいた涙目の騎士――よく見ると少女だ――が叫び声をあげた。
 まるで絶望したような、そんな彼女の顔を一睨みして黙らせて、改めてテロリストの顔を見る。

「殊勝なことだ。ほかの騎士も、君のように従順ならいいんだがな」
「もう勝った気でいるの? あたしは、あんたたちが成功したら乗ってやるって言ってんのよ?」
「ふはははは! ならばもう君は我々の同志だよ! 何しろ、聖王教会騎士団のほとんどは今この場にいる! そして……」

 テロリストはにやりと笑って、コロシアムの中に指を向けた。

「最後の部外者たちも今追い込んだところだ」

 レオナがそちらの方に顔を向けると、砂煙と同時にデバイスマイスターたちを引き連れた、騎士団制服を着た男とスクライア一族の少女の姿が見えた。





「見事に追い込まれてしまったな」
「ですわねー」

 手に試作型デバイスの詰まったアタッシュケースを持ったロイドのつぶやきに、のんびりとした調子で同意したのはリーヤだ。
 その両手に掲げられているのは長い槍斧。これも試作型デバイスなのだが、手が足りなかったのだ。彼女の背中にも、デバイスが詰まった鞄がくくりつけられていた。
 ロイドが試作型デバイスをリーヤと一緒に抱えているのは、自分が使うデバイスの最終調整にロイドも付き合っていたからだ。ロイドが使うデバイスは、使用者とのこうした細かい調整が必須だったのが、幸いした。
 いきなり飛び込んできた数人をそばにあった長剣型デバイスで叩き伏せた後は、調整作業もそこそこにデバイスをみんな鞄の中に詰め込み、デバイスマイスターたちと一緒に脱出を図ろうとした。
 だが、そんな隙を見せるほどテロリストは愚かではなかった。行く先行く先にテロリストが待ち構え、時折散発的な射撃を繰り返してきた。
 防御魔法でも防げるのは幸いであったが、戦闘できないものを連れて強行突破するわけにもいかず、あれよあれよという間にテロリストの案内に従って、コロシアムの中まで誘導されてしまった。
 これがロイドひとりだったり、リーヤが転送魔法が使えたらまた結果も違っていただろうが、ないものをねだっても仕方がない。
 じっとしていると、ロイドたちにとっての前方に立っていたテロリストが銃の代わりに拡声器を持ってスイッチを入れた。

『んー、あー。……そこのデバイスを抱えている一般人諸君! 今すぐそれを地面において三歩下がれ! そうすれば、命だけは助けてやるぞ!』
「お決まりの脅し文句だな」
「品もなければ捻りもない。聞き飽きましたわよこの手のセリフは」

 テロリストの脅し文句の定型句を聞いて、ロイドとリーヤはげんなりと顔をゆがめた。
 元々ロストロギアなどを狙う盗掘団とも遭遇することがあるスクライア一族に所属する二人だ。この手の脅し文句の遭遇率は、一般人よりはるかに多い。そしてこういう脅しを使ってくる輩がまともに約束を守らないこともよく知っている。
 とはいえ状況は絶望的だ。周囲三百六十度丸々敵だけ。騎士団のメンツも見えるが、周りすべてが敵な上に銃まで構えられては動きのとりようがないらしい。
 リーヤが形成できる結界ならば、味方が来るまで耐えることもできるだろうが、そうしたら今度は周りに騎士たちに何をやり始めるか分かったものではない。

(ふむ。八方ふさがりとはこのことか)

 ぼんやりと思考するロイド。その表情は、あくまで平素のものだ。
 実際、そこまで絶望的にはなっていない。状況は間違いなく最悪であるが、少なくとも何もできないわけではない。本当に最悪なのは、何もできないことと何もしないことだ。
 それを知っていれば、この程度絶望でもなんでもない。

(そもそもハルスならば、こんな状況笑ってどうにかするだろうしな)

 そう。スクライア一族は少なからず、こんな状況に出くわすことがある。
 だからこそ、最低限の自衛手段を持つし、切り抜けてきたからこそ今ここにいる。
 娘を迎えに行くために、テロリストを数人薙ぎ払って外に出て行ったという幼馴染の姿を思い浮かべ、ロイドは瞑目する。
 現状、この包囲陣を突破するだけの手段は持ちえない。
 ならば、用意すればいい。

「……キナ」
「オイッス!」

 その名を呼べば、打つような返事が返ってきた。
 一人だけヘルメットをかぶり、ひたすらキーボードと格闘していたキナが、そのヘルメットを外してロイドへと手渡してきた。

「仕上がりは?」
「上々ッス!」
「そうか。ならば重畳」

 キナから受け取ったヘルメットは、フルフェイスタイプのものだ。のっぺりとした丸いヘルメットで、装飾のようなものは見えない。
 バイザーにあたる部分には、代わりにモノアイタイプのカメラアイが設置されている。
 通常のヘルメットよりもはるかに重く、両手で持つだけでかなり負担がかかる。
 だが、それでいいのだ。命を預ける物品なのだから。
 ロイドはそれを両手で持って、数歩降伏勧告を行ったテロリストのそばへと歩み寄った。

『……? 貴様、何のつもりだ?』
「なに。せっかくだから、試運転に付き合ってもらおうと思ってな」

 聞こえはしないだろうがそれだけ言い放ち、ロイドはおもむろにヘルメットを被った。

《Get Ready?》
「当然だ。起きろ、サイクロプス」
《Yes,My Master》

 起動音とともに、ヘルメットの裏にあったモニターに数式や文字の羅列が滝のように流れていく。
 同時にロイドの姿が閃光で包まれ、テロリストたちがあわてて銃を構える。

『な、なんだ!?』

 律儀に拡声器で声を拡大するテロリストに苦笑しつつ、ロイドは改めてテロリストの姿を視界にとらえる。
 数瞬ののちのロイドは、全身鎧に包まれた重装騎士へと化していた。
 全体的に丸みを帯びているものの、その姿は力強さに満ちている。装甲の隙間は特殊繊維でおおわれ、その背中には聖王教会騎士団の紋章をあしらったマントが羽織られていた。
 全身装着型、強化装甲鎧。それが、今ロイドが身にまとっているデバイスの正体だ。
 その名を。

《AMD−01 Cyclops get set》
『き、貴様!?』

 交渉役だったテロリストが手を上げ、周りに攻撃の合図をしようとする。
 だが、それより早くロイドの体が動いた。
 サイクロプスの背中に装着されているバックパックから勢いよく魔力ジェットが吹き出し、その体をテロリストが立っていた観客席へと叩きつけた。

 ズゴォォォォォォンンンン!!!!

 長い歴史の間、積み上げられていた岩石がまるでクッキーか何かのように粉々になっていく。
 舞い上がる砂煙の中、サイクロプスに備えられたセンサーアイが周囲の状況を詳細に捉える。

(ここにいるテロリストは十組ほど、うち人質の形でとられている騎士たちは八組。そしてその中で隊長クラスの魔力を持っているものは三組。ならば……!)

 煙幕が収まらぬうちに、高速思考でそこまで状況を把握し、目の前にあった石造りの観席を鷲塚む。
 メシリ、と石が砕ける音とともにサイクロプスの指が観客席にめり込む。
 そのまま勢いよく片手で観客席を持ち上げ。

「おおおぉぉぉぉぉ!!!」

 一番近い位置に存在した、騎士団を捕らえているテロリストたちに向かって投げつけた。
 空気を刳り抜く轟音と共に、砲弾のような勢いで岩石の塊が飛翔する。

「うおぉぉぉ!!??」

 テロリストたちが雲の子を散らすように逃げ惑う。
 そして飛んで行った石の塊は、タワーシールドを構えた騎士にぶつかって砕け散った。
 だがロイドはその光景を見ることはなく、バックパックから火を吹き出し、別方向のテロリストたちに向かって突き進む。

「う、撃てぇぇぇぇぇぇ!!」

 リーダー格らしい男の叫び声とともに、銃弾の膜がロイドに向かって突き進む。
 だが、サイクロプスの装甲は銃弾などものともせずすべてをはじき返す。

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 ロイドが大きく振りかぶった拳を回避するために、テロリストたちが大急ぎで散らばっていく。
 当たれば最悪即死、いいとこ全身骨折だ。その判断は正しい。
 だが、ロイドは彼らの予測に反して拳を振りかぶった大勢のまま、観客席に軟着地した。
 同時に屈みこみ、次の跳躍に備える。
 そのロイドの頭上を風を切る剛槍が唸りを上げて通り過ぎ、周囲のテロリストをそのまま薙ぎ払っていく。

「ロイド殿! ここはもう良い!」
「了解した」

 テロリストが見せた隙を、文字通り巧みに突く老齢の槍騎士の言葉にロイドは短く答え、他の騎士を援護するために飛びあがった。
 見れば、先ほど観客席を叩きこんだテロリストの一団は、あっという間に頭上を抑えたらしい弓騎士の手腕で制圧。手助けしなかった隊長クラスの騎士も、ロイドが巻き起こした混乱に乗じて周囲のテロリストを制圧していた。
 残っているのは、隊長クラス抜きで捕らえられていた騎士たちだったが、何とか思い思いに反撃している。
 だが、おそらく新米だけで捕らえられていたであろう騎士たちが一か所にまとめられ、倒されていないテロリストたちがそこに集中し始めていた。

(いかん、あの新米たちをまた人質にとられては、面倒なことになる!)

 大急ぎで騎士たちを助けに行くが、テロリストが集結するほうが早い。

「ハッハァ! そこで飛んでるロボット野郎! このガキどもの命が惜しければ、おとなしく降りて来い!」
「チッ!」

 まだ幼いといっても良い少年騎士の頭に銃口を押し付けるテロリストの姿に、ロイドは空中で停止せざるを得ない。
 だが、テロリストたちはここで一つ見落とした。
 彼らが人質にとれる存在は、新米の騎士たちだけではなかったのだ。

 シュポーン。

「あ?」

 そんな間抜けな音ともに、テロリストの眼前に何やら丸っこいものが飛んでくる。
 テロリストがその弾道を追うと、いい笑顔で黒光りする筒のような物体を構えている白衣の少女の姿が。
 それを認識すると同時に、着弾した物体……フラッシュグレネードが爆音と閃光をまき散らした。

 バッ!!!!

「「「「「ぐぁぁぁぁぁぁ!!!???」」」」」

 たまらず目を閉じ、身体を振り乱すテロリストたち。
 そして閃光が収まると同時に。

「ライジング・フィストォッ!」
「ぬぅん!」
「残影・幻光っ……!」

 ロイドの魔力を込めた拳、老騎士の剛槍、短剣を携えた騎士の一撃が、テロリストたちへと襲い掛かった。

「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!??」」」」」

 哀れ、紙切れか何かのように吹き飛ぶテロリストに、無言のまま倒れ伏すテロリスト。
 新米騎士たちはいまだ閃光に慣れぬ目を何とか開いて、目の前の光景を目に治めた。

「す、すごい……!」
「やれやれ、話にならないな……」

 短剣を持った騎士が、地に付したテロリストを侮蔑するように首を振って見せる。
 と、狙ったようなタイミングで観客席へつながる通路からテロリストが顔を見せた。
 響く銃声。

「っと!?」

 短剣を持った騎士が回避するより早く、サイクロプスの腕部装甲が銃弾をはじき、老騎士の突きより発生した衝撃波がテロリストを通路口ごと吹き飛ばした。

「油断大敵だぞ、ナイツ。敵はここに見えるよりはるかに多い」
「フン、カッコつけとる暇があったら、身体を動かさんか!」
「はいはい、わかりましたよ……。下っ端隊長は、セコセコ働きますよっと……」

 短剣騎士……ナイツはロイドと老騎士の言葉に、自虐するような顔になって通路へと近づいてゆく。
 ロイドもそれに続こうとするが、老騎士の槍に遮られた。

「ランス老?」
「あとはわしに任せよ。ロイド殿はここに残って、若い騎士たちと負傷したものの護衛をしてもらいたい」

 老騎士……ランスの言葉にロイドが首をめぐらせると、観客席の一か所にデバイスマイスターや若い騎士たちが集まって、ワラワラと湧いてくるテロリストたちに対応していた。
 だが、隊長クラスらしい盾を構えた騎士は負傷の具合がひどいのか動きがぎこちない。
 早急に援護する必要があるか、と考えたロイドはランスの言葉にうなずいた。

「では、お任せます」
「うむ。任された」

 ランスはにやりと笑ってみせると、そのまま通路口の中へ姿を消した。
 ここに出てくるテロリストがすべてではないだろう。周辺を囲っているテロリストも殲滅しなければならない。

(まあ、あの二人なら問題はあるまい)

 ロイドはそう自己完結し、防衛に徹する騎士たちの援護に向かう。
 三度、重厚な鎧がジェットを吹き出し宙に舞った。










―あとがき―
 そんなわけで起承転結の承ー。明らかに転だわコレ。
 無駄に名前あり騎士が二人ほど増えました。名前が出てるのはスクライア一族以外だと名前が出た騎士は四人ですが、うち二人はリーベで出てます。もうみんな記憶の彼方だろうけどな!
 次回からお祭り現場に視点を移しますー。戦闘機人無双?




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